大判例

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札幌高等裁判所 平成3年(う)121号 判決

…前略…原判決は,所論の各書面に関し,その「証拠の標目」欄に「N無線株式会社A作成のJMA―141F型光電式車両走行速度測定装置精度確認書(株式会社H作成の同測定装置点検成績書添付)謄本」として挙示し,これらを一体の書面として処理しているところ,なるほど,「光電式車両走行速度測定装置精度確認書の謄本のコピー」と「光電式車両走行速度測定装置点検成績書のコピー」とについて,司法警察員が,前者に後者を続けて綴りこれを契印した上,後者の末尾に謄本認証をする扱いをしており,形式上は,1通の謄本と見られるものである(なお,これらの書面が,コピーの謄本であることは,証拠能力を検討する上で,特別の意味をもつものでないと考えられるから,以下,その旨の記載等を省略して,単に前者を「精度確認書」と,後者を「点検成績書」という。)が,その文書(原本)の形式・作成者・内容等に照らすと,点検成精書は,精度確認書の添付書面ではなく,むしろ,精度確認書が,点検成績書のうち項目13の「精度確認」の点検結果「良」の具体的内容をなすものであり,この意味では,逆に,点検成績書が精度確認書をその内容の一部としている。換言すると,右の「精度確認」の点検は,検査方法が異なり,別の検査会社,検査担当者が実施している関係上,点検成績書から独立させて別の書面にしたものと認められる。そうして,精度確認書は,後記するとおり,検査の方法・内容等が異なることに対応して,その証拠能力の点でも,点検成績書と必ずしも同一ではなく,格別に検討すべきものと考えられる。したがって,記録に徴し,原裁判所が,この点に留意せず,刑訴法323条3号により,両者を一括して処理した,すなわち,まず,検察官が,両者を区別せず,単に精度確認書として証拠調請求をし,弁護人が不同意の意見を述べると,更に刑訴法323条3号による請求をし,原裁判所においても,これに基づき採用・取調べをしたことが認められ,かように精度確認書に点検成績書が添付されていることを明らかにしないまま処理したのは,手続上,明確を欠くものであり,適切を欠くといわざるを得ない。しかしながら,原判決の前記「証拠の標目」欄の記載に加え,原審の審理においても,検察官が点検成績書を引用して論告をし,弁護人においても,この点に異議を述べた形跡がないこと等に照らすと,点検成績書が精度確認書の添付書面として一括処理されたことについて,当事者の理解にそごはなかったものと認められる。

そこで検討すると,精度確認書は,N無線株式会社技術第7部品質管理課・課長A作成にかかる平成元年10月20日付のものであり,その内容は,右の日に行った,本件検挙に使用したJMA―141F型光電式車両走行速度測定装置(「本件測定装置」という。)の精度確認の結果を記載したものであって,要するに,車両の代わりに基準信号発生器を本件測定装置に接続し,この基準信号発生器の発生する基準値と同装置の出力とを比較して,その差が許容値内ならば,精度は保持され動作は正常と判定するという方法により,基準値を15段階に分けて検査した結果,本件測定装置が「マイナス2.5パーセントマイナス1キロメートル毎時」の測定精度を有し正常な機能及び動作を保持することを確認する旨記載している。そして,右内容に原審証人Bの供述を加えて考えると,精度確認書は,専門の業者(会社)の係員が,事件とは直接関係なく定期的な検査の一環として実施し,もっぱら機器により機械的に本件測定装置の精度を数値的に検査した結果の記載であって,この検査結果は,性質上,作成者の主観・判断・作為等の入る余地は通常ないものと認められる。したがって,原裁判所が,これを刑訴法323条3号の書面として採用・取り調べたことに誤りはない。

しかしながら,点検成績書は,(1)株式会社Hの検査担当者が,本件測定装置の点検を各項目ごとに点検した結果を記載した部分(ただし,このうち項目13の担当者・内容・性格等は,さきに説示したとおりである。)と,(2)司法警察員作成の検査の完了証明の部分とから成る書面であるが,その内容に照らすと,右(1)の部分は,当然には刑訴法323条3号所定の書面にあたるものではないと考えられる(なお,原裁判所がその作成者を尋問しその作成の真正を確かめた形跡はない。)。また,(2)の部分は,その作成者等の尋問がされていないため,断定はできないが,刑訴法321条3項((1)の部分を含めその全体について)若しくは同法321条1項3号により,その証拠能力を判断すべきものと考えられ,いずれにしても,原裁判所が,点検成績書を刑訴法323条3号によりその証拠能力を認めたことは首肯することができない。

以上によると,原裁判所が,精度確認書を刑訴法323条3号の書面として採用・取調べたのは是認することができるが,点検成績書をも同号で採用・取調べたのは誤りであり,この点で,原審の訴訟手続には法令違反があるといわざるを得ない。しかしながら,本件では,点検成績書を除いても,原判決挙示のその余の各証拠によって,原判示の罪となるべき事実を認めることができるから,右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな場合とは言えない。

…以下省略…

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